体内時計を味方につける 朝の習慣で変わる夜の眠り
加齢と睡眠の変化、体内時計の関係
夜中に何度も目が覚めてしまう、朝早く目が覚めてしまうといった睡眠の悩みは、年齢を重ねるにつれて多くの方が経験されるものです。ぐっすり眠れたと感じる日が減り、健康寿命への関心が高まる中で、睡眠の質の低下は気になる課題の一つかもしれません。
このような加齢に伴う睡眠の変化の背景には、「体内時計」のリズムの変化が関係していると考えられています。体内時計は、私たちの体温やホルモン分泌、そして睡眠と覚醒のリズムなど、様々な生体機能を約24時間周期でコントロールしている司令塔のようなものです。
加齢によってこの体内時計のリズムが少しずつ前倒しになったり、外部からの刺激(特に光)による調整機能が弱まったりすることがあると言われています。これが、夜早い時間に眠気を感じるようになったり、逆に朝早く目が覚めてしまったりする原因の一つとなることがあります。
なぜ朝の習慣が体内時計を整える鍵なのか
体内時計は、放っておくと24時間よりも少し長い周期で動いているため、毎日リセットして実際の24時間周期に合わせる必要があります。このリセットに最も重要な役割を果たすのが、「光」です。特に朝、目から入る光の情報が脳に伝わることで、体内時計はリセットされ、体のリズムが整えられます。
そのため、夜の眠りの質を改善するためには、実は「朝」の過ごし方がとても大切になってきます。朝の習慣を意識することで、体内時計を適切にリセットし、夜自然な眠気を誘うリズムを作りやすくなるのです。
体内時計を整える具体的な朝の習慣
では、具体的にどのような朝の習慣が体内時計を整えるのに役立つのでしょうか。ここでは、高齢者の方でも無理なく取り入れやすい、いくつかの習慣をご紹介します。
1. 毎日同じ時間に起きることを心がける
体内時計を安定させるためには、規則正しい生活が基本となります。休日も含めて、できるだけ毎日同じ時間に起きるように努めましょう。たとえ前の晩の眠りが浅かったとしても、朝はカーテンを開けて光を浴びるなどして体を活動モードに切り替えることが大切です。遅くまで寝てしまうと、体内時計が後ろにずれ、夜寝つきが悪くなる原因になることがあります。
2. 起きたらすぐに日の光を浴びる
体内時計を最も効果的にリセットするのは、朝の光です。起きたらまずカーテンを開けて窓の外を眺めたり、ベランダに出て数分間光を浴びたりする習慣をつけましょう。可能であれば、軽い散歩などで外の空気に触れるのも良い方法です。晴れた日だけでなく、曇りの日でもある程度の光の効果はあると言われています。室内でも、窓際に移動するだけでも違います。
3. 軽い朝食をとる
朝食をとることも、体内時計を整える手助けとなります。食事のタイミングも体内時計に影響を与える要素の一つと考えられており、特に朝食は体を目覚めさせ、活動を開始するスイッチのような役割を果たします。消化の良いものや、体を温めるものなどを少量でも良いので口にする習慣をつけましょう。
4. 午前中に軽い運動を取り入れる
体を動かすことも、体内時計を整え、心身の健康を保つ上で重要です。ラジオ体操やストレッチ、近所をウォーキングするなど、無理のない範囲で午前中に体を動かす習慣を取り入れてみましょう。適度な運動は、夜の寝つきを良くする効果も期待できます。ただし、激しい運動は避け、体調と相談しながら行うことが大切です。
大切なのは「無理なく、続ける」こと
これらの朝の習慣は、一度に全てを取り入れる必要はありません。ご自身のライフスタイルや体調に合わせて、まずは一つか二つ、無理なく続けられそうなことから始めてみてください。
体内時計のリズムはすぐに整うものではありません。焦らず、毎日少しずつ意識することで、徐々に体のリズムが整い、夜の眠りの質が良い方向へ変わっていく可能性があります。
眠れない夜が続くと心細く感じられるかもしれませんが、朝の過ごし方を見直すことが、良い眠りへの一歩となることもあります。ご自身の体と向き合いながら、できることから取り組んでみましょう。
もし、様々な工夫をしても睡眠の悩みが続く場合は、医療機関に相談することも考えてみてください。専門家からのアドバイスが、解決の糸口となることも少なくありません。